内閣という国の中心部で、『推しが武道館いってくれたら死ぬ』という作品が認知されている。

『推し武道』といえば、地方の地下アイドルとそれを泥臭く追うオタクたちのリアルな日常を描いた作品だ。 収入のすべてを推しに注ぎ込み、赤ジャージ姿で現場に立ち続ける主人公えりぴよの姿は、サブカルチャーのかなり濃密な領域に属している。 あの独特な熱量とオタク心理の描写は、界隈に通じている人間だからこそ深く刺さるものだと思っていた。

それが政治や行政の最前線、ましてや内閣という最も堅苦しい場所で普通に認知されているというのは、何とも言えない可笑しさと胸が熱くなるような感慨深い。 単に「推し活」という言葉が一般化しただけでなく、特定の作品やその文脈までもが公的な場に浸透している証拠だろう。

政策を練り、国を動かしている側の人々の中にも、自分たちと同じように作品を楽しみ、あるいは現場の熱量を知っている人間が存在している。 そう考えると、どこか遠い世界のように感じていた内閣という存在に、妙な親近感すら覚えてしまう。

サブカルチャーが社会の共通言語となり、巡り巡って国の中心にまで届いている現実は実に面白い。 オタクの執念とも言える推しへのエネルギーが、知らず知らずのうちに時代を動かす文化の一部になっているのだと、なんだか少し誇らしい気持ちにさえなってくる。